ムンクこんにちは、ムンクです!
こんにちは、ムンクです!
今日は緊急に、厚生労働省が中止・回収を発表した「AYA世代1のがん啓発ポスター」について考えます。
私は、がんを経験し、今も定期的にフォローを受けている身の上です。


だからこのニュースを見たとき、単なる「ポスター炎上」の話として通り過ぎることができませんでした。
映画そのものを否定したいわけではありません。すべてのがん患者が、私と同じように感じるとも思っていません。
それでも、今まさにがんと向き合っている人たちに支援制度を届けるためのポスターに、なぜ「死」を強く意識させる表現を選んだのだろう——。
そこが、どうしても見過ごせませんでした。
- AYA世代のがん啓発ポスターが中止・回収された経緯
- がんを経験した私がこのポスターに感じたこと
- 病気の現実を伝えながら希望を奪わない伝え方
確かに、がんは怖くない病気ではありません。でも、怖さを伝えることと、怖がらせることは同じなのでしょうか。
今回は、がん経験者のひとりとして、このニュースから考えたことを書いてみます。
厚労省のAYA世代がんポスター問題
今回のタイアップが発表されたのは、2026年8月19日です。そこからわずか5日後、厚労省は中止とポスター回収を決めました。
映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』とタイアップ。
AYA世代のがん患者や家族へ、治療・仕事・経済面などの支援制度をまとめた「がんの治療と暮らしを支える制度ガイド」を周知する目的でした。
ポスターの掲示先には、がん診療連携拠点病院2なども含まれていました。
発表後、映画タイトルを大きく掲げたポスターを、治療中の患者が訪れる場所に掲示することへの疑問や批判が広がります。
発表からわずか5日後に、厚労省はタイアップを中止。送付済みのポスターを回収。特設ページやSNS投稿も削除しました。
映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」とのタイアップ中止について|厚生労働省
厚労省はなぜ中止した?
「患者の皆様やそのご家族等への配慮に欠ける点があった」と説明しています。
ここで重要なのは、もともとの目的が「がんの怖さを伝えること」ではなかった点です。むしろ、がんと診断された人の暮らしを支える制度を知らせるためのものでした。



そこに今回の問題の本質がある!
がんを経験した私がポスターに感じたこと
私は、いわゆるがんサバイバー3です。
だからといって、がん患者を代表して何かを言えるわけではありません。同じ病気でも、受け止め方は人それぞれ。誰一人としてコピペしたように同じ気持ちのはずがないのです。
それでも、こうして想いをブログにして発信しようと思ったのは、問題のポスターを見て真っ先に、
「今、ケモ4真っ最中の人がこれを見たら、どう感じるだろう」
と、胸が張り裂けそうになったからでした。
がんと診断されたあとも生活は続く
がん宣告をうけたからといって、すべてがリセットされるわけではありません。治療のこと、仕事のこと、お金のこと、家族のこと。目の前にある一つひとつを考えながら、日常をつないでいくことになるのです。



ムンクさんはそれを1人で乗り越えてきたんだ



誰も頼れる人がいなかったから!
そんな人が支援制度を探そうとしている場所で、先に「死」を強く意識させる言葉が目に入る。私は、そこに激しい違和感を覚えました。
もちろん、がんが命に関わる病気であることまで隠してほしいわけではありません。怖いものを無理に明るく言い換える必要もないと思っています。ただ、病気の現実を伝えることと、絶望を先回りして渡すことは、同じではない。少なくとも、私はそう感じます。
そして今回、もう一つ気になったのは、問題になった言葉がもともと一人の女性が生きた時間を伝える映画のタイトルということです。
それを映画館で目にすることと、治療のために通う病院で国の啓発ポスターとして目にすること。同じ言葉でも、その意味はまったく同じなのでしょうか?



次に考えたいのは、まさにそこ!
問題は「誰に・どこで・何のために」届けたか
今回、私が切り分けて考えたいのは、映画そのものと厚労省の広報はまったく別物だということ。
映画のタイトルは、一人の女性が生きた時間を伝えるためにつけられたものです。でも、それを国が「支援制度を知らせるポスター」として使えば、言葉の役割は変わります。
| 映画として見る | 支援制度のポスターとして見る | |
|---|---|---|
| 誰が見る? | 作品を選んだ観客 | がん患者や家族 |
| どこで見る? | 映画館・作品紹介など | がん診療を行う病院など |
| 何のため? | 一人の人生を描く | 治療や暮らしの支援を知らせる |
| 受け取り方 | 物語として向き合う | 自分の病気と重ねる可能性がある |
同じ言葉でも、置かれる場所が変われば受け取られ方も変わる。とくに病院は、映画を見るために自分で選んで訪れる場所ではありません。
- 検査結果を聞く人もいる
- 治療を受ける人もいる
- 家族の付き添いで来ている人もいる
そこに掲げる言葉には、映画の宣伝とは違う配慮が必要だったのではないでしょうか。
今回の問題を考えていくと、私はそんなふうに思います。
そもそも私たちは今でもがんという病気を必要以上に「死」と結びつけてしまっているのでは⁉
「がんになった=死」は今も現実なのか
今も根強く残る「がん=死」というイメージの実態を、数字で確認してみましょう。
数字で見る現在のがん医療
こうして見ると、「がんになった=死」と言い切れないのは確かです。
ただし同時に、「今はがんになっても大丈夫」とも言えません。がんは種類や病期、年齢などによって予後が大きく異なるからです。
私自身、がんなる前と後では明らかにいろいろなことが変わりました。それでも治療後の生活は続き、仕事をし、家族と暮らし、この先のことを考えています。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「全がん統計」/国立がん研究センター「がんの5年生存率を公表」
怖がらせれば、人は動くのか
病気の啓発では、あえて怖さを伝えて行動を促す「恐怖訴求(fear appeal)6」という手法があります。実は研究では、恐怖を使ったメッセージにも一定の効果が認められています。ただし、ただ怖がらせればいいわけではありません。
恐怖訴求で重要なのは?
| 恐怖だけ | 恐怖+対処法 |
|---|---|
| 「こんな危険があります」 | 「こんな危険があります。だから、こう行動できます」 |
| 不安だけが残る可能性 | 次の行動につなげやすい |
2015年の大規模なメタ解析でも、危険を避けるための有効な対処法を一緒に示した場合、より効果が高まることが報告されています。
でも今回、情報を届けたかった相手は、これから病気を予防する人ではありません。すでにがんと診断され、治療や暮らしの支援を必要としている本人や家族です。
人を動かすことと、人を支えること。同じ伝え方でいいのでしょうか。



今回のポスターを見て、そこがとても気になりました
出典: Tannenbaum et al.(2015)恐怖訴求に関するメタ解析
医療情報は「正しい」だけで十分なのだろうか
ここまで見てきたように、がんの怖さを伝えること自体が間違いなのではありません。ただ、医療情報は「書かれていることが正しい」だけで完結するものでもないと思います。
米国国立がん研究所(NCI)は、患者中心のコミュニケーションには情報を伝えるだけでなく、患者の感情への対応、不確実性への対処、意思決定の支援なども含まれるとしています。
病気を軽く見せることも、「前向きなら大丈夫」と患者に求めることも、希望とは違います。怖さや落ち込みを抱えたままでも、必要な情報や支援につながり、その先を自分で選べる余地を残すこと。それも医療情報の役割ではないでしょうか。
今回のポスターが知らせようとしていたのは、まさに患者の治療と暮らしを支える制度でした。だから私はなおさら、正確に伝えることと、希望を奪わない配慮は両立できると思うのです。
出典: National Cancer Institute「Communication in Cancer Care(PDQ®)」
ここでいう「希望」は、前向きでいることを患者に求めるものではありません。怖さや不安を抱えたままでも、その先を自分で選べる余地を残すことだと私は考えています。
現実を隠さず「希望」も奪わない
それでは、本記事の着地点です。
- がんの怖さと「がん=死」は分けて伝える
- 啓発は受け取る人の状況まで考える
- 正確さと希望は両立できる
冒頭でも紹介しましたが、このブログの原点となった「がん告知」については、初回記事に書いています。





他人事とは思えず熱く語ってしまいました!
- AYA世代:Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の略。年齢層を表す言葉で、がんに限った用語ではないが、日本では医療、とくにがん医療や患者支援の文脈で使われることが多い。がん領域では一般に15~39歳を指す。 ↩︎
- がん診療連携拠点病院:全国どこでも質の高いがん医療を受けられるよう、国が一定の基準に基づいて指定する医療機関。専門的ながん治療のほか、相談支援や情報提供なども行う。 ↩︎
- がんサバイバー:がんと診断された人を、治療中・治療後を問わず広く捉える言葉。診断された時点から生涯にわたって「サバイバー」と考える場合もある。 ↩︎
- ケモ:「ケモセラピー(chemotherapy)」の略で、抗がん剤などを用いる化学療法を指す。患者や医療者の会話で使われることがある。 ↩︎
- 5年相対生存率:がんと診断された人が5年後に生存している割合を、同じ年齢・性別などの一般集団と比較して算出した指標。「5年後に治っている確率」をそのまま表すものではない。 ↩︎
- 恐怖訴求(fear appeal):危険や恐怖を意識させることで、態度や行動の変化を促すコミュニケーション手法。健康啓発や広告などで用いられる。 ↩︎





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